サプリで血清葉酸値はどれくらい変化する？

葉酸は必要ですが、先日の記事「妊娠中の母体血清葉酸値と胎児の先天性心疾患」で書いたように、血中の葉酸値が高くなりすぎることも問題です。

血中の葉酸値は野菜やサプリなどを積極的に摂ると、どれほど上昇するのでしょうか？

今回の研究は、さすがに妊婦さんを実験台にするわけにはいかないので、妊娠していない、大学の食物栄養学科に在籍している女子学生（年齢 20-21 歳）が対象です。

2つの実験をしています。一つ目は、女子学生12人を対象に、葉酸食品4種（緑黄色野菜、葉酸米、グミサプリ、タブレット）を 1か月間摂取してもらい、摂取前と摂取15日後、摂取1か月後に おける血清葉酸濃度を測定しました。n=3のものすごく小規模の研究です。

緑黄色野菜は、ブロッコリーとほうれん草のどちらかを1日あたり120g（葉酸量 132-144 μg 相当）を茹でて摂取。葉酸米（例えばこんなものが市販されています。）は、ビタミン強化米1日あたりスプーン1杯（葉酸 218 μg 相当）を米飯炊飯時に混ぜて炊き摂取。グミサプリは、グミサプリメントとして1日あたり2粒（葉酸 240 μg 相当）を毎日摂取。タブレットは、葉酸タブ レットタイプのサプリメントとして1日あたり2粒（葉酸 400 μg 相当）を毎日摂取しました。なぜか摂取する葉酸量を合わせていません。

葉酸食品4種を摂取している期間は、通常の食事を摂取しました。（図は原文より）

上の図の1は緑黄色野菜、2は葉酸米、3はグミサプリ、4はタブレットサプリをそれぞれ摂ったときのベースライン、15日後、1か月後の血清葉酸値です。

緑黄色野菜では、摂取前7.3ng/mL、摂取15日後8.4ng/mL、摂取1か月後11.3ng/mLと上昇しました。茹でて摂取しても意外と上がるもんですね。

葉酸米では、摂取前6.9ng/mL、摂取15日後9.8ng/mL、摂取1か月後14.4ng/mLと上昇傾向が観察されました（有意差なし）。

グミサプリでは、摂取前6.1ng/mL、摂取15日後9.5ng/mL、摂取1か月後13.6ng/mLと上昇しました。

タブレットでは、摂取前5.4ng/mL、摂取15日後14.6ng/mL、摂取1か月後19.1ng/mLと大きく上昇しました。まあ緑黄色野菜の2.8倍もの葉酸を摂取しているので、これくらい上昇しても不思議ではないかもしれません。

葉酸サプリメントを食物と一 緒に摂取した場合の吸収は約85％、食物なしの単独で摂取した場合の吸収はほぼ100％だそうです。

次に2つ目の実験です。女子学生9人を対象に、緑黄色野菜9種（枝豆、アスパラガス、サニーレタス、ブロッコリー、 オクラ、ほうれん草、春菊、リーフレタス、水菜）を3か月間摂取してもらい、摂取前、摂取1か月後、2か月後、3か月後における血清葉酸値を測定しました。緑黄色野菜は1回当たり100 g（葉酸量 90 ～ 260 ㎍）とし、1日1回、週3回以上通常の食事に加えて摂取しました。

上の図は緑黄色野菜9種の摂取前後の血清葉酸値です。摂取前6.3ng/mL、摂取1か月後7.8ng/mL、摂取2か月後8.8ng/mL で、摂取前と比べて2か月後で有意に上昇しました。3か月後はやや減少しています。3か月もやっていると、ちゃんと摂取しなくなってしまったのかもしれません。しかしたった週に3回野菜を増やしただけでも葉酸値には効果があるようです。

厚労省の葉酸摂取の推奨量は1日240μgで、妊娠可能な女性への注意事項として、神経管閉鎖障害発症の予防量として1日400 μg が必要としています。でも、それをタブレットのサプリで1日400 μg摂った今回の実験のように、1か月後には3人の平均で19.1ng/mLまで上昇、人によっては20ng/mLを超えていました。ここまで上がる先天性心疾患のリスクが高くなってしまいます。（「妊娠中の母体血清葉酸値と胎児の先天性心疾患」参照）

緑黄色野菜だけでなく、レバーや卵、納豆などでも葉酸は摂取できます。食材からでも1日400 μgは難しい数字ではないと思います。食材からの方が恐らく血中濃度の上昇は穏やかで、必要以上には上がらないでしょう。逆にサプリは栄養素の塊ですから、血中濃度も急上昇してしまいます。

妊婦さんだけでなく、あまり葉酸の摂取量、血中の葉酸値が高いと、高齢者では認知機能が低下する可能性が高くなったり、がんのリスクが増加したり、NK細胞の機能低下を起こす可能性があります。（「ビタミンは難解なパズル　そのパズルが解けるならサプリメントを飲んでもいいでしょう…」参照）

サプリではなく、やはり食材から葉酸は摂取すべきでしょう。

「葉酸食品摂取からみた血清葉酸濃度との関連性」（原文はここ）