スタチンはLDLコレステロールを低下させますが、スタチンの恩恵を受けられる人はほんのわずかです。(実際には恩恵などないかもしれませんが)恩恵を受けられず、スタチンを飲んでいたにもかかわらず、心血管疾患を発症してしまう人もいっぱいいるでしょう。そうするとスタチン医者は残余リスクがあったから、それにより心血管イベントが起きたと、都合の良いことを言います。
実際にはその都合の良い言い訳の残余リスクの代表である、レムナントコレステロールの方が重要でしょう。レムナントコレステロールそのものというよりは、それが増加する状態がリスクなのです。
今回の研究では、スタチンで治療を受けているにもかかわらず、冠動脈疾患が進行してしまうこととレムナントコレステロールの関連について分析しています。血管内超音波検査を受けた冠動脈疾患患者5754人のデータを分析しました。平均年齢は58.1歳で、28% が女性でした。高頻度のリスク要因として、高血圧78%、高脂血症75%、喫煙25%、糖尿病28%でした。患者の大多数はスタチン(96%)とアスピリン(93%)で治療されています。アテローム容積率(PAV)の変化とレムナントコレステロールの関連は下の図のようです。(図は原文より)
上の(a) は治療中の平均レムナントコレステロール値を4つのグループに分けたときと、 (b) 治療中の平均レムナントコレステロール値で21未満、21~40、41~60、60超えの4つに分けたとき、のアテローム容積率の変化 (ΔPAV%) との関連です。一目瞭然、レムナントコレステロールが増加すると、アテローム容積率が増加します。
上の図のようにレムナントコレステロールが20mg/dLを超えると直線的に増加するように見え、正味のアテローム進行 (ΔPAV > 0) は、レムナントコレステロール値が25mg/dL を超えると発生しました。アテローム容積率の変化は、LDLコレステロール、アポリポタンパク質B、CRP、HDLコレステロール値および臨床リスク因子とは無関係に、治療中のレムナントコレステロールと有意に相関していました 。やはり、LDLコレステロールとは無関係です。
上の図は、治療中の平均レムナントコレステロール値で4つのグループに分けたときの主要な心血管イベント (MACE) の累積発生率との関連です。同様に、レムナントコレステロールが増加すると、心血管イベントの累積発生率が増加しています。特に最もレムナントコレステロール値が高いグループは1年以内でも他のグループよりも大きく発生率が高くなっています。最もレムナントコレステロールが高いグループと低いグループでは、2年以内の主要な心血管イベント発生率は23%対14%と大きく違っています。
スタチン治療を受けているアテローム性心血管疾患患者では、レムナントコレステロールが冠動脈アテロームの進行と関連していました。レムナントコレステロールは残存リスクというよりは、マーカーでしょう。レムナントコレステロールが増加する状態を改善することが最も重要なのです。
以前の記事「レムナントコレステロールと心血管疾患のリスク LDLコレステロールはどうしちゃった?」では、今回と同様に、レムナントコレステロールはほとんどの心血管疾患で増加しています。しかしLDLコレステロールは増加するほど心血管疾患が低下していました。
「レムナントコレステロール増加は高中性脂肪を表している」で書いたように、レムナントコレステロールの増加は中性脂肪の増加であり、それは糖質過剰摂取の結果です。
医療では、コレステロール摂取量を減らせ、飽和脂肪酸の摂取量を減らせと言われますが、それでレムナントコレステロールは低下しません。レムナントコレステロールを低下させる食事は糖質制限です。3食きっちりとバランスの良い食事は糖質過剰摂取となり、レムナントコレステロールを増やす可能性があります。
「Remnant cholesterol, coronary atheroma progression and clinical events in statin-treated patients with coronary artery disease」
「スタチン治療を受けた冠動脈疾患患者におけるレムナントコレステロール、冠動脈アテロームの進行および臨床イベント」(原文はここ)
「医療では、コレステロール摂取量を減らせ、飽和脂肪酸の摂取量を減らせと言われますが、それでレムナントコレステロールは低下しません。レムナントコレステロールを低下させる食事は糖質制限です。3食きっちりとバランスの良い食事は糖質過剰摂取となり、レムナントコレステロールを増やす可能性があります。」
医療は生活に欠かせないものですが、所謂「生活習慣病」等の慢性疾患に対しては期待できないかもしれないですね。