心臓の冠動脈のプラークを増加させるのはLDLコレステロールではない その1

虚血性心疾患は、一般的にアテローム性動脈硬化で、血管の内壁にLDLコレステロールなどが蓄積して、隆起(プラーク)が形成され、そのプラークが血管内で成長して血流が悪くなったり、プラーク破裂や血栓によって、血管が狭くなったり詰まったりすることで起こると考えられています。

今回の研究では、スタチンによる脂質低下療法中のプラークの進行について、糖尿病の人と非糖尿病の人で比較しています。糖尿病と非糖尿病では同程度にLDLコレステロールが低下していました。(糖尿病2.12mmol/L(82mg/dL)、非糖尿病1.8mmol/L(70mg/dL))

しかし、それにも関わらず1年後では糖尿病の人ではプラーク領域およびアテローム体積パーセントの進行を認めました。

将来の心臓イベントのリスクを高くする脆弱なプラークを予測する、リバプールアクティブプラークスコア(LAPS)を計算すると、糖尿病では増加し、非糖尿病では低下しました。(図は原文より)

上の図は左側が糖尿病、右側が非糖尿病であり、プラークの範囲やプラークの組成の1年間の変化率を示しています。細かい説明は省略しますが、オレンジ色のバーが増加、グリーンが減少を示しています。糖尿病では多くの部分で増加し、非糖尿病では多くの部分で低下していることがわかります。
また、将来の心臓イベントのリスクが最も高いプラーク表現型であるTCFA(thin-cap fibroatheroma:薄いフィブリン被膜で覆われた不安定なプラーク)は、非糖尿病と比較して、糖尿病でより頻繁に発生しました。

つまり、LDLコレステロール値が下がったとしても、糖尿病ではプラークが進行してしまうのです。もちろん、糖尿病という病名がプラークを進行させるわけではありません。恐らく、高血糖、高インスリン血症、インスリン抵抗性がプラークを進行させていると思います。

プラークの中にLDLコレステロールが含まれているからと言って、LDLコレステロールが犯人ではありません。(「LDLコレステロール値が高いだけではアテローム性動脈硬化は起こらない その1」「LDLコレステロールは本当に動脈の血管内腔から血管内皮を通って、アテローム性動脈硬化を起こすのか? その11」「その10」「その9」「その8」など参照)

まずは糖質制限でしょう。

次回以降にはインスリン抵抗性とプラークの関連について書きたいと思います。

糖質過剰症候群

「Plaque volume and plaque risk profile in diabetic vs. non-diabetic patients undergoing lipid-lowering therapy: a study based on 3D intravascular ultrasound and virtual histology」

「脂質低下療法を受けている糖尿病患者対非糖尿病患者のプラーク量とプラークリスクプロファイル:3D血管内超音波と仮想組織学に基づく研究」(原文はここ

コメント

  1. 西村 典彦 より:

    プラークの面積(一番上の図)で言えば、Non-diabetesにおいても1年後には、ほぼ±0、つまり脂質低下療法(スタチン)はプラークの面積には無関係であると言えるのではないでしょうか。
    もちろん、Diabetesにおいては肥大していますから論外ですが。

    面白いのは、糖尿病、非糖尿病のどちらも開始2~4ヶ月は悪化し、6~7ヶ月目くらいが最良となり、またその後に悪化していく(ないしは元に戻っている)ように見えます。
    なぜでしょうね。
    スタチンで下げられたコレステロール以外のなにかが、人体の必要に応じて再び増えてくるのでしょうか。

  2. 鈴木 武彦 より:

    まっとうで、知的好奇心を刺激してくださるこのブログ毎回楽しみに読んでます。

    最近糖質制限情報で、オーガスト・ハーゲスハイマー博士の名前をよく眼にします。
    この先生の御説に「GI値を気にするのは日本人だけ、世界的にはGL値がより重要」
    があります。

    解説読んでも理解不能でしたが、ひとつ、それを後ろ盾に米やパスタ、人参などは
    糖質制限的に問題は少ない(GL値低い為)と主張されていて、ほんまかいな?
    と関西弁で疑問符です。

    毎度、あまり関係のないコメントで申し訳ありません。

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木 武彦さん、西村 典彦さん、コメントありがとうございます。

      私も西村さんと同意見です。

  3. 西村 典彦 より:

    鈴木 武彦 様
    清水先生

    横から失礼します。

    私は2型糖尿病ですが、米やパスタを食べれば食後血糖値がどうなるかを考えれば問題ないかどうかわかります。

    糖尿病ではない人が食べるにはどうか分かりませんが、GIだろうがGLだろうが私には50歩100歩ですw
    食べても大丈夫なものとそうでないも(私にとって食料ではないもの)を見極めるには、毎食の食後血糖値をチェックしています。GI値もGL値も研究結果も論文も都市伝説も関係ありません。今のところ、食後ピーク血糖値を判断基準にしています。
    毎食、血糖値が200を超えても問題ないと言うなら別ですが。

    因みに血糖値ではないですが、私は週20個の卵の摂取で確実にコレステロール値が上がります。最近の医学では、食品中のコレステロールは検査値には影響しないと言う事になっていますが、誰でもそうなるわけではありません。研究も論文も関係ありません。人それぞれだと思います。

  4. 鈴木 武彦 より:

    西村様、非常に分かりやすいご意見、ありがとうございます。
    そうですよね、
    摂取する糖質量が大事で、GIだろうが、GLだろうが(糖質依存症者の)気休めのように感じます。

    ちなみに私は毎日温泉卵を4~5個は食べています。
    私にとっては特に問題ないようです。

  5. ぱぴ より:

    いつも有益な情報をありがとうございます。

    これは、糖尿病でない人であれば、スタチンを使ってLDLコレステロールを下げた方が、将来の心臓イベントのリスクは下がるということを意味しているのでしょうか?

    • Dr.Shimizu より:

      ぱぴさん、コメントありがとうございます。

      スタチンで強力に高いLDLコレステロール値を低下させれば、心臓イベントのリスクを数%は低下させることができるかもしれません。
      しかし、全体としての死亡率が下がるわけではありません。つまり、ほかの病気で死んでしまう可能性が高くなるのかもしれません。

      • ぱぴ より:

        清水先生、ご回答ありがとうございます。

        私はFHで、長年、医師に言われるがままにスタチン系の薬を服用し続けていましたが、半年ほど前に自分の判断で止めました。

        なので、「やっぱり飲んでた方が良いのかな?」という感じのデータは気になりますね。

        • Dr.Shimizu より:

          ぱぴさん

          私のブログの中の検索で、「家族性高コレステロール血症」で検索していただければ、FHの様々な記事がありますので、
          参考にしてください。私は糖質制限をしっかりしていればFHも治療が必要ないと思っています。