高血糖、高インスリン血症、そして糖尿病は全身に様々な症状を起こします。当然、心臓にも良いはずがありません。突然に心停止が来るリスクも高まります。
今回の研究では、2009年に韓国の全国健康診断を受けた20歳以上の400万人以上のデータを分析しました。33,345,378人年にわたる追跡調査中に、16,352件の突然の心停止イベントが発生しました。下の表は、突然の心停止のある人とない人のベースラインの特徴です。(図は原文より、表は原文より改変)
なし | 心停止あり | p値 | |
---|---|---|---|
4,040,071 | 16,352 | ||
男 | 2,221,898 (55.0%) | 11,633 (71.1%) | < 0.001 |
年齢(歳) | 47.0±14.1 | 62.0±13.2 | < 0.001 |
BMI (kg/m 2 ) | 23.7±3.2 | 23.8±3.4 | 0.138 |
腹囲(cm) | 80.2±9.5 | 83.5±8.9 | < 0.001 |
喫煙 | |||
非喫煙者 | 2,399,679 (59.4%) | 7916 (48.4%) | < 0.001 |
元喫煙者 | 581,485 (14.4%) | 3128 (19.1%) | |
現在喫煙者 | 1,058,907 (26.2%) | 5308 (32.5%) | |
アルコール消費量 | |||
お酒を飲まない | 2,077,053 (51.4%) | 9534 (58.3%) | < 0.001 |
穏やかな酒飲み | 1,641,427 (40.6%) | 5263 (32.2%) | |
大酒飲み | 321,591 (8.0%) | 1555 (9.5%) | |
定期的な運動 | 733,609 (18.2%) | 3148 (19.3%) | < 0.001 |
収入 (下位 20%) | 704,587 (17.4%) | 3075 (18.8%) | < 0.001 |
糖尿病 | 349,134 (8.6%) | 4264 (26.1%) | < 0.001 |
糖尿病の段階 | |||
非糖尿病患者 | 2,776,161 (68.72%) | 7970 (48.7%) | < 0.001 |
空腹時血糖値の異常 | 914,776 (22.64%) | 4118 (25.2%) | |
新たに発症した糖尿病 | 119,558 (2.96%) | 1025 (6.3%) | |
糖尿病 5年未満 | 118,215 (2.93%) | 1272 (7.8%) | |
糖尿病 5年以上 | 111,361 (2.76%) | 1967 (12.0%) | |
空腹時血糖 (mg/dL) | 97.2±23.8 | 110.0±41.5 | < 0.001 |
高血圧 | 1,082,382 (26.8%) | 9331 (57.1%) | < 0.001 |
高血圧段階 | |||
非高血圧 | 1,383,411 (34.24%) | 2566 (15.7%) | < 0.001 |
高血圧前症 | 1,574,278 (38.97%) | 4455 (27.2%) | |
高血圧 | 334,302 (8.27%) | 1777 (10.9%) | |
薬を内服している高血圧 | 748,080 (18.52%) | 7554 (46.2%) | |
最高血圧 (mmHg) | 122.4±15.0 | 129.3±17.2 | < 0.001 |
拡張期血圧 (mmHg) | 76.3±10.0 | 78.9±11.0 | < 0.001 |
脂質異常症 | 732,983 (18.1%) | 4610 (28.2%) | < 0.001 |
脂質異常症の段階 | |||
総コレステロール < 240 (mg/dL) | 3,307,088 (81.9%) | 11,742 (71.8%) | < 0.001 |
総コレステロール ≥ 240 | 347,131 (8.6%) | 1541 (9.4%) | |
薬を内服して総コレステロールが 240 以上 | 385,852 (9.6%) | 3069 (18.8%) | |
コレステロール (mg/dL) | 195.3±41.1 | 195.1±44.3 | 0.549 |
HDL (mg/dL) | 56.5±32.9 | 53.6±30.9 | < 0.001 |
LDL (mg/dL) | 121.2±214.2 | 115.0±97.8 | < 0.001 |
慢性腎臓病 | 275,854 (6.8%) | 2740 (16.8%) | < 0.001 |
eGFR (mL/分/1.73m 2 ) | 87.6±44.9 | 80.4±34.7 | < 0.001 |
突然の心停止を起こした人は、男性が多く、年齢も高く、BMIが心停止なし群と同じなのに腹囲が大きくなっています。つまり内臓脂肪が増加していると考えられます。糖尿病や高血圧、脂質異常症が多くなっています。HDLだけでなくLDLも心停止なし群より低いのは興味深いですね。これについては次回以降で書きます。
上の図は左が高血圧および高血圧前症、右が糖尿病および空腹時血糖異常の有無による突然の心停止を起こす割合です。当然、高血圧や糖尿病があれば心停止を起こしやすくなっています。
多変量 2 | |
---|---|
糖尿病 | |
非糖尿病 | 1 |
空腹時血糖異常 | 1.075 (1.034–1.117) |
糖尿病 | 1.732 (1.663–1.803) |
高血圧 | |
非高血圧 | 1 |
高血圧前症 | 1.213 (1.157–1.272) |
高血圧 | 1.629 (1.547–1.715) |
突然心停止のリスクは空腹時血糖異常だけだと7.5%、糖尿病だと73.2%の増加、高血圧前症だと21.3%、高血圧だと62.9%の増加でした。
多変量 | |
---|---|
空腹時血糖値 | |
60~100 | 1 |
100~126 | 1.070 (1.030–1.112) |
126–200 | 1.494 (1.391–1.605) |
≥ 200 | 2.981 (2.551–3.484) |
糖尿病薬使用 | 1.863 (1.782–1.947) |
当然、空腹時血糖が上がれば上がるほどリスクは高く、200以上だとおよそ3倍のリスク増加になっています。糖尿病使用でも1.86倍です。
高血圧と糖尿病の状態 | 多変量 |
---|---|
高血圧、糖尿病、高血圧前症、空腹時血糖異常すべてなし | 1 |
高血圧前症または空腹時血糖異常のいずれか | 1.281 (1.211–1.354) |
高血圧または糖尿病のいずれか | 1.901 (1.793–2.017) |
高血圧と糖尿病の両方 | 3.078 (2.877–3.293) |
何もない場合と比較して高血圧と糖尿病が両方あると約3倍のリスクです。
耐糖能障害は心電図のQT間隔を延長します。(図はここ参照)
上の図のようにNGT(正常)と比較して耐糖能障害が悪化するにつれではQT間隔が延長します。DMは糖尿病です。糖尿病が最もQTが長くなっているのがわかります。
QT間隔の延長は致死性不整脈、突然死と関連しています。
つまり、高血圧も糖尿病も糖質過剰症候群なので、突然の心停止および突然死も糖質過剰摂取により起こりやすくなると考えられます。高インスリン血症もQT延長を起こします。(ここ参照)QT延長も糖質過剰症候群なのでしょう。
心臓の本来のエネルギー源は脂肪酸がメインです。ケトン体も良いエネルギー源です。しかし、糖質過剰摂取により心臓がブドウ糖をエネルギー源にする割合が大きく増加し、問題が起きているのでしょう。
突然死をできる限り回避するため、心臓のためにも糖質制限ですね。
「Hypertension and diabetes including their earlier stage are associated with increased risk of sudden cardiac arrest」
「高血圧と糖尿病は、初期の段階を含め、突然の心停止のリスクの増加と関連している」(原文はここ)
前借金のような、即効性エネルギーである糖質に依存により、身体に様々な負債が溜まっていくのでしょうね。