ビタミンBは非常に重要なビタミンです。ビタミンCと並んでビタミンB群をサプリメントで摂取している人も多いと思います。
糖尿病性腎症では、高ホモシステイン血症が頻繁に観察されます。ビタミンB群(葉酸、ビタミンB6、およびビタミンB12)により、ホモシステインの血漿濃度を低下させることが示されています。
しかし、本当に良いのでしょうか?
今回の研究では、糖尿病性腎症の人に葉酸2.5mg/d、ビタミンB6 25mg/d、およびビタミンB1 21mg/dを含むビタミンB群を投与されました。追跡期間は平均31.9ヶ月です。
結果は、腎機能を評価するための糸球体濾過量(GFR)の変化は、18か月後でプラセボ群が -8.1mL/min/1.73m2の低下であるのに対し、ビタミンB投与群では-10.2の低下を示しました。さらに、36か月後ではプラセボ群で-10.7の低下であるのに対し、ビタミンB投与群では-16.5も低下してしまいました。透析を必要とする人の割合に差はありませんでした。
予期せぬGFRの逆の所見にもかかわらず、ホモシステイン値の結果は予想通りで、36カ月後、ビタミンB投与群ではホモシステイン値が2.2μmol/L減少し、プラセボ群では2.6増加していました。
それ以外の結果にも差が出ました。(図は原文より)
上の表は36か月後までに起きた様々なアウトカム、併発症を示しています。上から透析、心筋梗塞、脳卒中、血行再建術、全原因死亡、心筋梗塞と脳卒中と血行再建と全原因死亡を合わせたもの、心筋梗塞と脳卒中と全原因死亡を合わせたもの、下肢の切断を示しています。
ちょっと統計的にずるいのですが、有意差が出ないので、様々なものを合わせたものを比較していたりします。そうすると、心筋梗塞と脳卒中と血行再建と全原因死亡を合わせたものはプラセボ群と比較してビタミンB投与群では2倍になっていました。
上の図は心筋梗塞、脳卒中、血管再生および全死亡率の累積割合です。ビタミンB投与群で23.5%、プラセボ群で14.4%でした。つまり、良かれと思って投与したビタミンB群が逆に腎機能の悪化をもたらし、その他の心血管イベントの増加ももたらしたことになります。
以前の記事「高タンパク食は腎臓に悪影響がないばかりか糸球体濾過量(GFR)を増加させる」では、タンパク質の摂りすぎは腎臓に悪いと信じられてきたことを否定する内容でした。
今回は糖尿病性腎症に良いと思われていたビタミンBが逆に腎臓に悪影響がある可能性を示しました。何が本当に良くて何が悪いのか、これまで信じられてきたことは正しいとは限りません。
今回の研究は当然、糖質過剰摂取状態でのビタミンB群の投与なので、糖質制限をした場合には当てはまりません。
しかし、サプリメントの形で摂取したものが本当に体にとって有益なものかどうかはわかりません。食材に含まれているものとは別物である可能性もあります。
この研究に関わらず、以前の記事「ビタミンのサプリメントは飲めば良いってもんじゃない!本当に必要か、効果はあるのかの慎重な検討が大切かも?」「ビタミンやミネラルのサプリメントは心血管疾患のリスクを低下させない?」「ビタミンのサプリメントは本当に有益か?抗酸化物質の暗黒面その2(人間の場合)」などでも書いたように、大して効果がないか、健康に悪影響をもたらす可能性すらあります。
糖質制限をしている方でも、非常に多くの方がサプリメントに頼っているようです。サプリメントの効果はほとんどの場合測定できないのでわかりません。何となく飲んでいるのであれば止めてみるのも一つの選択です。
そのサプリメントは本当に必要ですか?本当にあなたに健康をもたらしますか?
「Effect of B-Vitamin Therapy on Progression of Diabetic Nephropathy
A Randomized Controlled Trial」
「糖尿病性腎症の進行に対するB-ビタミン療法の効果 無作為化比較試験」(原文はここ)