一般的にはまだLDLコレステロールは悪者扱いです。スタチンをできる限り多くの人に飲ませるためには、LDLコレステロールを悪者扱いするしかありません。しかし、以前の記事「LDLコレステロール値は役に立たない」「LDLコレステロールを低下させることの有益性の証拠はない!」などで書いたように、LDLコレステロール値を下げることの根拠は非常に怪しいのです。
私は、中性脂肪の方が重要なリスク因子だと考えています。そして、中性脂肪値とHDLコレステロール値の比は非常に心血管疾患のリスクを表していると考えています。それは、「中性脂肪/HDLコレステロール比と酸化ストレス」で書いたように、中性脂肪/HDLコレステロール比が高くなると酸化ストレスも高くなるという研究や、「糖質制限とLDLコレステロール上昇3」などで書いたように、中性脂肪/HDLコレステロール比が高くなると、小さな危険なLDLがどんどん増加するという証拠が多くあるからです。
以前の記事「中性脂肪が低くHDLコレステロール値が高いと虚血性心疾患のリスクは低い」でもエビデンスを示しましたが、今回は別の研究です。(図は原文の表からグラフ化した)
上の図は中性脂肪値により4つのグループに分けて、そのグループの心筋梗塞のリスク比を示しています。最も中性脂肪値の低い1のグループの平均中性脂肪値は70.1mg/dL、その次の2グループは108.5、3が138.7、最も高い中性脂肪値のグループは278.9でした。
そうすると、最も中性脂肪の低いグループのリスクを1とすると、最も中性脂肪の高いグループのリスクは6倍以上です。HDLコレステロール値で調整すると、中性脂肪値と心筋梗塞の関連は弱くなりましたが、それでも2倍以上です。
そして、中性脂肪/HDL比でみると、なんと最も低いグループと比較して最も高いグループのリスクは16倍にもなるのです。
私は中性脂肪/HDL比は1.3以下を推奨しています。中性脂肪を低下させるのは脂質摂取制限ではありません。糖質制限で中性脂肪値は低下するのです。
「Fasting Triglycerides, High-Density Lipoprotein, and Risk of Myocardial Infarction」
「空腹時中性脂肪、HDL、および心筋梗塞のリスク」(原文はここ)