不健康なアスリート その3 無知

以前の記事「不健康なアスリート その1」「その2 睡眠時無呼吸」では、体重増加に関する問題点を書きました。今回はその逆です。アスリートの中には体重を増やすのではなく、減らすことを強要(?)される種目もあります。長距離ランナーやフィギュアスケートなどです。

そして、栄養に関する知識が乏しいアスリートやコーチなどは、とにかく食事を減らすことしか考えられない人もいるのでしょう。ただの無知です。体は栄養が必要であり、それを毎日補給していかなければ、体の部品は錆びついてしまい、故障を起こしやすくなります。また、様々な体の機能を維持するにも、毎日の栄養が非常に重要になります。

しかし、無知のため、下の記事のように1日に食パン3枚だけしか食べないような食生活をすれば、様々なトラブルが発生する可能性が高くなるのも当たり前でしょう。ひどい場合には摂食障害を起こしてしまう場合もあります。栄養障害では脳が異常を起こしても無理はありません。

このような種目で一流になるには非常に過酷であり、食生活もこれほど無理をしなければならない、とは考えないでください。ちゃんとした食事を摂れば決して体重がどんどん増加するわけではありません。

(記事の原文はここ

1日に食パン3枚? フィギュアスケートの選手たちは不健康な食生活に苦しんでいる

2018年2月15日 ビジネスインサイダージャパンより 

  • フィギュアスケートの選手たちは、長年にわたり厳しい食事制限や摂食障害に苦しんできた。
  • 多くの選手は、コーチや審査員、そして自分自身からのもっと痩せなければというプレッシャーを感じている。これが厳しい食事制限や不健康な食生活につながっている。
  • アメリカのフィギュアスケーター、アダム・リッポン選手は、より健康的な食生活を取り入れつつ、スケーターとしての目標を達成しようとする選手の1人だ。

世界トップレベルのフィギュアスケーターたちは、どんな角度から見ても、どんなに難しい技をやっても、美しく見えなければならないとのプレッシャーに常に直面している。

ニューヨーク・タイムズのカレン・クルース(Karen Crouse)記者が報じているように、フィギュアスケートの選手たちは、長年にわたり摂食障害や栄養不足に苦しんできた。アメリカのフィギュアスケーター、アダム・リッポン選手はこの問題に光を当てようと試みている。

クルース記者によると、リッポン選手はこれまでの人生を通じて、常に体重を減らさなければというプレッシャーにさらされてきた。成長するにつれ、リッポン選手はその筋肉質な下半身がフィギュアスケートの選手としては大きすぎると言われたという。2016年には、1日の食事量は全粒粉の食パン3切れとコーヒーのみだった。バターも塗らなかった。

「いま考えると、めまいがしてくる」リッポン選手はクルース記者に語った。

女子フィギュアでは、ロシアのユリア・リプニツカヤ選手、アメリカのグレイシー・ゴールド選手といった若い2人のスターが、すでに摂食障害の治療のために、競技生活を離れている。

フィギュアスケーターは、コーチや審査員、そして自分自身から、もっと痩せなければ、もっと痩せて見えなければというプレッシャーに常にさらされている。

「審査員にもっと体重を減らせと言われれば、健康的に痩せる方法など考えている時間はない」元オリンピック選手のブライアン・ボイタノ氏はクルース記者に語った。

コーチも残酷になり得る。クルース記者によると、旧ソ連の元コーチでリッポン選手を指導するラファエル・アルトゥニアン氏はかつて、選手たちを「太っている」と呼んで、体重を減らすよう動機付けていた。その後、アルトゥニアン氏はこうした批判がスケーターにとって良くないと学んだという。

だが、こうした変化はフィギュア界全体で十分に広がっているわけではない。ロイターは1月、日本の元フィギュアスケート選手、鈴木明子氏は、かつてジャンプに苦しんでいたとき、コーチに体重を減らすよう言われたことで、負のスパイラルに陥ったと報じた。同氏は治療を受けるまでに、2カ月で全体重の3分の1を失っていた。

「スポーツは、自己管理です」ロシアのフィギュアスケーター、エフゲニア・メドベージェワ選手は食生活について、ロイターに語った。「毎日、自分自身をコントロールしなければなりません。弱さに負ければ、自己嫌悪に陥る。それがどんな気分か、誰もが知っているでしょう」

こうしたカルチャーは、現役を引退した選手にも色濃く残っている。クルース記者によると、NBCのアナリストで元オリンピック選手のジョニー・ウィアー氏は、今でも1日1食、午後5時前には食事を終え、あとはコーヒーを飲むだけだ。ウィアー氏にとっては、1かけらのダークチョコレートもしくはスプーン1杯のキャビアがごちそうだ。

「それだけで本当に幸せな気分になれる」ウィアー氏は語った。

リッポン選手が食生活を変えたのは、2017年に足を骨折してからのことだ。クルース記者によると、リッポン選手はスポーツ栄養士とともに、より自然で栄養豊富な食生活を取り入れるようになった。

「自分が常にこんなに疲れていたとは、思っていなかった」リッポン選手は語った。食生活が変わったことで、食べ物は燃料だと見られるようになったと言う。

全米摂食障害協会(NEDA)のデータを引用したニューヨーク・タイムズは、アメリカでは2000万人の女性と1000万人の男性が、摂食障害に悩まされた経験があると報じている。この問題はフィギュアスケート界に根強く残っている。だが、徐々にではあるものの、スケーターたちは不健康な食生活を自分に強いなくても、身軽で細い体型を維持することはできると気付き始めたようだ。

食パンは栄養価はほぼゼロでしょう。ただの糖質の塊であり、人間の体にとって最も重要なタンパク質や脂質、ミネラルなどはほとんど入っていません。食パン3枚で得られる栄養は次のようです。(食パン3枚180gとして)

エネルギー 475kcal、タンパク質 16.74g、脂質 7.92g、炭水化物 84.06g

ビタミンB1 0.13mg、ビタミンB2 0.07mg、ビタミンB6 0.05mg

ナトリウム 900mg、カリウム 174.6mg、カルシウム 52.2mg、マグネシウム 36mg、鉄 1.08mg、亜鉛 1.44mg

オメガ3系 多価不飽和 0.13g、オメガ6系 多価不飽和 1.75g

アスリートとして必要なタンパク質の4分の1以下ではないでしょうか?必須アミノ酸も全く足りません。炭水化物だけが突出して多いのがわかります。これではスタミナが持たないでしょう。持久力は脂肪から得るのです。ビタミンB群も必要最低限の量の3分の1程度でしょう。しかもこのような大量の糖質を摂っているので、よくこれで脚気にならないな、と思ってしまいます。(「糖質過剰摂取で脚気になる!乳幼児で死亡例もある!スポーツドリンクなんていらない!」参照)

ミネラルも全く足りません。

必須脂肪酸も悲惨な少なさです。

これでは20年間メンテナンスも何もしていない車に、ガソリンの代わりにサラダ油を入れて走っているようなものです。完全に「無知」です。

では、日本の羽生結弦選手はどのような食事を摂っているのでしょうか?(記事はここ

羽生結弦、SP最高演技の裏にある完璧な食事プラン

2018/02/17 アスリートめしより

 右足首故障からの復帰戦で羽生結弦(23=ANA)が完璧な演技で首位発進した。2本の4回転を含む3つのジャンプを成功。自身が持つ世界最高にあと1・04点と迫る111・68点で、66年ぶりの五輪連覇へ王手をかけた。

 羽生の最高の演技の裏には、完璧な食事プランがあった。「味の素ビクトリープロジェクト」の下、2度目の五輪に向けて目指したのはスタミナが持続する体。ポイントはバランスのいい3食と補食の摂取だ。3食の間にアミノ酸を何度も摂取し、この2年弱で体内の筋量を増やし、4回転を何本も跳ぶ過酷なフリーを滑りきる体を作り上げた。

羽生の食事

 平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)期間中も、食事はしっかり食べている。朝型のスケジュールに合わせ、摂取時間を通常より数時間早めた。韓国入りした11日からは急ピッチの調整で疲れた体をリカバリーするメニュー。14日からは試合に備え、スタミナ補給に重きを置いた。前日午後4時ごろに食べた勝負メシは豚のしょうが焼きに豚汁と豚ずくめだった。

 SPを終えた羽生は「ご飯をいっぱい食べて、しっかり寝て、明日に備える」とフリーに向けて胃袋から戦闘態勢に入った。

量がよくわかりませんが、タンパク質、アミノ酸はかなり十分に摂っているようです。大量のご飯だけが気になりますが、練習前であれば全く問題ないでしょう。練習後であれば血糖値がもし上がっていたら、修復される筋肉の質が悪くなってしまいます。

食パン3枚でなくて少し安心しました。

しかし、この食事、朝食のごはんで糖質約60g、飲むヨーグルト(200ml)で約26g、オレンジ60gで約6g、ガリバタポテトはどれほどのポテトの量かわかりませんが糖質を10g、として、味噌汁で約5gとすると、計107gの大量の糖質を摂っています。食後すぐに練習をするのであれば血糖値の上昇は少なくて良いのですが、エネルギー源は完全に糖質、グルコースです。

フィギュアスケートがどれほどの運動量かはよくわかりませんが、あの動きで4分の演技でヘロヘロになるのは明らかにスタミナがないと思えます。食事が悪いとしか思えません。ジャンプやスピンのときは大変なのかもしれませんが、それ以外の滑りではものすごいエネルギーが必要とは思えません。(もし違っていたらごめんなさい)

「スタミナ補給に、豚ずくめ」は非常に良いのですが、エネルギー回路がグルコースを使う回路です。

グルコースをエネルギー源にしてるとスタミナが切れてしまうのであれば、ケトン体質になればもっと楽に演技ができる気がしてなりません。しかも持久系の筋肉はマラソンランナーを見ればわかるように、大きく肥大しません。体重管理にも問題を起こしません。

以前の記事「一流アスリートの食事、勝負メシ?そんなもの食っているから錦織圭選手はスタミナがない!」「一流アスリートの食事、勝負メシ。本当に面白い内容です。」にも書いたように、日本のトップアスリートでも栄養管理は非常に低レベルです。フィギュアスケートの浅田真央選手はなどは肉をほとんど食べず、野菜ばかり食べていたと言います。これでは先ほどの「食パン3枚」と変わりありません。そして、管理栄養士がスタミナをつけるときに白メシを勧めるのです。「スタミナ=糖質」から抜け出ないとならないと思います。

また、いまだに、「食べるな!」というだけの減量法を強要する指導者がいるとしたら、その人は完全に無知であり、すぐに離れるべきでしょう。

コメント

  1. 駐在君 より:

    はじめまして、ketoで筋トレ・トレーニー実践してる者です。非常に参考になるブログ内容で勉強させていただいてます。日本の管理栄養士は厚労省と農水省が作った炭水化物重視で最新科学データ無視の「食事バランスガイド」に基づく国家試験を取った人たちなんですね。日本人特有の主食(ごはん)と言う概念も彼らの努力の賜物でしょうか? 自分は海外在ですが欧米人に主食(staple)は何?と聞くとポテトだったり、肉と卵だったりと人それぞれです。先日、舌癌の手術をしたスイーツ好きな堀ちえみさんが、「甘いものは癌に良くない」という話を聞いたので入院中に管理栄養士さんにあんみつ食べていいか聞いたら、どんどん食べろと言われたらしいです。せめて病気を克服しようとしてる人にはもう少し適切なアドバイスをしてほしいですね。https://ameblo.jp/horichiemi-official/entry-12451943931.html

    • Dr.Shimizu より:

      駐在君さん、コメントありがとうございます。

      どんな適当なアドバイスをしたとして、その後再発しても、この栄養士が責任を追及されるわけではないので、
      こんなことが言えてしまうのです。
      しかし、誰を信じるかは本人の判断ですから。

      このことは、今度記事にさせていただきます。