GLP-1受容体作動薬は様々な副作用があります。(「その1」「その2」「その3」「その4」「その5」「その6」参照)
でもこの薬の需要は非常に大きく、製薬会社も医療側も儲かるので、あまり副作用については説明されないかもしれませんね。
GLP-1受容体作動薬は甲状腺がんのリスク増加と関連している可能性があります。
今回の研究では、2型糖尿病患者3,746,672人が参加し、そのうち4,466人が甲状腺がんを発症しました。がんの既往歴のある人を除外した後、甲状腺がんの成人2,562人と甲状腺がんのない対照45,184人のデータを分析しました。(図は原文より)
その結果、GLP-1受容体作動薬を使用している人は、現在その薬を使用していない人に比べてすべての甲状腺がんのリスクが1.46倍高く、GLP-1受容体作動薬を1~3年間使用した人では1.58倍、3年以上使用した人では1.36倍リスクが高くなりました。甲状腺髄様がんは1.78倍のリスク増加でした。
DPP-4阻害薬を3年以上使用した人は、非使用者と比較して甲状腺がんのリスク増加が1.19倍になりました。
また最近出されたFDA有害事象報告システムにおけるGLP-1受容体作動薬と甲状腺がんとの関連を見てみましょう。(この論文参照。プレプリントなので注意が必要です)
17,653件のGLP-1受容体作動薬グループと14,102件のSGLT-2阻害薬の報告を含む合計31,755件の単独療法の報告がありました。
下の図のように、GLP-1薬の単独療法の報告では、甲状腺過形成/腫瘍はSGLT-2 阻害剤と比較した場合の報告オッズ比 (ROR) は 21.80でした。GLP-1薬を個別に分析した場合、すべての GLP-1薬は、SGLT-2 阻害薬と比較して、RORはセマグルチド(オゼンピックなど)20.58倍、デュラグルチド(トルリシティ)17.6倍、エクセナチド(バイエッタ)7.62倍、およびリラグルチド(ビクトーザ)35.31倍でした。(図はこの論文より)
例えばオゼンピックの添付文書には甲状腺に関しては次のようなことしか書かれていません。
8.8. 本剤投与中は、甲状腺関連の症候の有無を確認し、甲状腺関連の異常が認められた場合には、専門医を受診するよう指導すること
5.2. 非臨床試験に基づく情報
ラット及びマウスにおける2年間がん原性試験において、臨床用量に相当する又は下回る用量(最大臨床用量でのAUC比較においてラットでは定量下限未満のため算出できず、マウスで約1.3倍)で、甲状腺C細胞腫瘍の発生頻度の増加が認められたとの報告がある。
甲状腺髄様癌の既往のある患者及び甲状腺髄様癌又は多発性内分泌腫瘍症2型の家族歴のある患者に対する、本剤の安全性は確立していない
つまり、処方される患者さんには恐らく甲状腺がんのリスクが増加する可能性については全く知らされていないでしょう。糖尿病の場合、糖質制限と比較するのであれば、GLP-1受容体作動薬で得られる利益は高くありません。他の糖尿病薬と比較すると利益はある可能性はあります。様々なリスクを考えれば、この薬を使用する意義は微妙です。医療側はそれなりに高い薬なので使いたがるかもしれません。
しかし、GLP-1受容体作動薬を単に美容、減量目的として利用するのであれば、リスクについてちゃんと理解している必要があります。痩せたいと思って使ったら甲状腺がんになってしまったのでは大変です。
いずれにしても、副作用のない薬はありません。糖尿病、減量のためには糖質制限です。
「GLP-1 Receptor Agonists and the Risk of Thyroid Cancer」
「GLP-1 受容体作動薬と甲状腺がんのリスク」(原文はここ)
年をとる程、新しい事は覚え難く、
分かりやすい「権威」
の方々の指示に従うのが楽に
なってきますが、
それが自分にとって有効なのかは
また別問題。
その点(誉め殺しではありません)
権威でいらっしゃる
そしてなにより自分にしっくりくる
情報発信してくださる、
清水先生の存在は貴重です。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
私は権威ではありません。自分が正しいと思ったことを勝手に垂れ流している、変わりものの医師です。
マスコミ御用達専門家、企業のセールスマンや広報担当になっている専門家よりはマシだとは思っています。
オゼンピツク、カナグル服用中。
甲状腺の数値は血液検査で毎回検査項目にある。処方なんだから当たり前だと思ってる。
この程度の検査をやらないで処方される医師がいるのだろうかと思った。
膵臓がんも定期的にMRCP検査。
糖質制限も主治医の指示でやってる
たかさん、コメントありがとうございます。
処方したなら検査をするというのは当然だとは思いますが、現実はどうでしょうね?
また、検査をしさえすればリスクのある薬をインフォームドコンセントなしに処方する、というのは疑問です。
意外とリスクのインフォームドコンセントなし、特別な検査なしも多いと思います。
でも糖質制限に理解のある主治医で良かったですね。
ほとんどの糖尿病専門医は糖質制限を指示することはないですからね。