マウスウォッシュは止めよう その6 歯そのものへの効果も疑問

マウスウォッシュには様々な成分を含んでいるものがあり、それぞれで効果が違うかもしれません。しかし、本当の効果はどうなのかはわかりません。特に殺菌成分が入っていると口腔内の細菌叢のバランスが崩れてしまい、有害な作用が発生する可能性もあります。そして、それは歯そのものにも影響する可能性があります。

クロルヘキシジンを含んだマウスウォッシュは全身への様々な有害性がある可能性があります(「その1」「その2」「その3」「その4」「その5」)が、歯そのものへの効果はどうなんでしょうか?せめて歯にとっては非常に大きな効果が無いと使う意味はありませんよね。

では、コクランのメタアナリシスを見てみましょう。

まずは、歯肉炎について、歯肉炎指数:the Gingival Index (GI)というものを用いて評価しています。GIは0~3で評価されます。クロルヘキシジンを含んだマウスウォッシュにより、4~6週間および6か月間では、GIが0.21低下しました。ただし、平均GIが1という軽度の歯肉炎の人の結果なので、これが臨床的に重要な改善とは考えられません。平均GIスコアが1.1~3で、中程度または重度の歯肉炎を示す人におけるクロルヘキシジンマウスウォッシュの歯肉炎の軽減を判断するには証拠が不十分でした。

歯肉炎に対しての効果は微妙というところでしょう。

歯肉炎による歯肉出血については、プラセボ/コントロール群およびマウスウォッシュなしのコントロール群の両方を含むすべての研究の全体的な効果推定値は、4~6週目で標準化平均差 (SMD)‐0.56と中等度であり、クロルヘキシジンマウスウォッシュの方が歯肉出血が減少しました。しかし、この差が臨床的に効果的なのか私には判断ができません。

次に、歯垢はどうでしょう。歯垢はさまざまな指標で測定され、4~6週目の標準化平均差(SMD)はクロルヘキシジン群で-1.45と歯垢の大幅な減少が示されました。6か月時点で同様の大幅な減少が認められました。4~6週でプラーク指数(0~3のスケール)を使用した4つの研究では‐0.58減少、Quigley and Hein指数のTuresky修正(0~5のスケール)を使用した4つの研究では‐0.78の減少と、クロルヘキシジンマウスウォッシュの方が歯垢が減ったことを示しています。確かに、クロルヘキシジンマウスウォッシュは歯垢を減らす効果はあるようですね。いいじゃないですか。

次に、歯石について。4~6週間のクロルヘキシジンマウスウォッシュ歯石に対する効果は認められませんでした。しかし、7~12週のマウスウォッシュなしの対照群を対象とした1件の試験では、クロルヘキシジン群の方が対照群よりも歯石が多く、標準化平均差 (SMD)1.02と、歯石形成に大きな効果があることが示されました。さらに、6か月で、参加者91名を分析した研究1件のみですが、マウスウォッシュなし対照群と比較して、クロルヘキシジン群で歯石の増加が見られ、標準化平均差 (SMD)と大きな影響がありました。プラセボ/コントロールマウスウォッシュを投与された参加者232名を分析した3件の研究結果では、クロルヘキシジンに関連する歯石の増加が見られ、標準化平均差 (SMD)0.60と中程度の影響が示されました。

どうやら、クロルヘキシジンマウスウォッシュは歯石を増加させてしまうようです。あらら。

では、歯の着色はどうでしょう。何となくマウスウォッシュを使うと歯もキレイに白くなりそうな印象ですよね?でも違いました。

4~6週間のクロルヘキシジンマウスウォッシュで歯の着色が起こるリスクは、なんと5.41倍。標準化平均差 (SMD)でも1.07と大きな影響があることが示されています。7~12週間でも、歯の着色リスクは2.5倍、標準化平均差 (SMD)でも1.19と大きな影響がありました。歯の着色に関しては完全にアウトです。そのためにホワイトニング効果がある成分を追加しなければならないというのも変な話です。

それ以外の副作用として、味覚障害/変化 、口腔粘膜への影響(粘膜の痛み、びらんなど)、および全身の灼熱感または舌の灼熱感、舌苔形成などがあります。

まとめると、クロルヘキシジンマウスウォッシュは歯垢の減少には効果的ですが、歯肉炎を減少させるかどうかは微妙で、逆に歯石と歯の着色を増加させ、味覚障害などの副作用ももたらします。こんなもの使っていて大丈夫でしょうか?

ところで、私は歯垢が増加すると、その後歯石が増加すると思っていました。歯垢が固まって歯石になるとばかり思っていたのです。しかし、今回の結果はそれと矛盾しています。クロルヘキシジンマウスウォッシュは歯垢が減るのに歯石が増加するのです。歯垢が減ったら歯石が増加する?つまり、歯垢と歯石は別のものと考えた方が良いのではないでしょうか。

でも歯医者さんのホームページには、歯石は歯垢が石灰化して硬くなったもの、というような説明がされています。歯みがきでみがき残した歯垢は数日ほどで歯石へと変わってしまう、などと言われているのです。そして、歯垢も歯石も虫歯のリスクを増加させるとも言われています。

本当なんでしょうかね?専門以外の領域の旅は面白いですね。ウソがいっぱい隠れているようにも思えてなりません。餅は餅屋、では必ずしもありません。悪徳餅屋もいます。餅屋をそのまま信じすぎると紛い物の餅をつかまされるかもしれません。

40代になり、糖質制限を始めたのですが、その前までは本当に無知でした。知識を得る、学ぶ、勉強する、ということは、教科書などに書かれていることを覚える、その分野に精通しているいわゆる専門家などの人の話を聞いたり、書いたものを読んだりしてそれを吸収する、それが知識を得るとか学ぶことだと思っていました。本当にバカで無知だったんですね。糖質制限を始めて、色々なことを調べ始めると、これまで正しいと思ってきたことがどんどん崩れていきました。通説となっていることも非常に怪しい仮説でしかないことがわかりました。そうすると、知識を得るとか学ぶということが、教科書や論文や専門家の言うことの何が正しくて何がウソなのかを探すことから始めなければならないことに気付きました。まずは疑問を持つことです。

特に医学はウソばかりです。人間という超複雑系が単純化され過ぎてしまっています。その単純化され過ぎた仮説は、人間の代謝やメカニズムの一部だけを切り取り、それを正常化させるように見せるように理論が構築されているだけです。生物学的、生理学的、生化学的など、もっと基礎の領域と矛盾がないようにしなければならないのに、それらは多くの場合無視されています。

結局は医療がお金に支配されてしまったことがダメなんでしょう。医療が人間のために本当に役に立つような時代がいつか来るのでしょうか?

「Chlorhexidine mouthrinse as an adjunctive treatment for gingival health」

「歯肉の健康のための補助治療としてのクロルヘキシジン洗口液」(原文はここ

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