「その1」では、ニューキノロン系の抗生物質で、腱障害という副作用という名の薬害が存在することを書きました。内服や点滴で起きるだけでなく、実は点眼や点耳でも腱障害が起きるという症例報告があります。
まずは点眼から。(ここ参照)甲状腺機能低下症と白内障の病歴を持つ56歳の男性が白内障手術を受け、モキシフロキサシンというニューキノロンの点眼薬を毎日投与されていました。治療開始14日目に左膝に激しい痛みを感じ、続いて左アキレス腱にも同様の痛みが生じました。痛みが始まって4日後、モキシフロキサシンの投与を中止しました。数日後、右膝と右アキレス腱に痛みが出現しました。白内障手術の少なくとも2か月前に椎間板ヘルニアに対するステロイド注射を受けていたことを明らかにしました。また、気管支炎に対するプレドニゾンの短期投与歴があり、直近の投与はモキシフロキサシン点眼薬による治療の1年前であったと報告しました。
身体所見では、両側アキレス腱の触診で圧痛を認めましたが、トンプソンテストは陰性で、腱腫脹は軽微でした。また、足首の底屈および背屈時に疼痛を認めました。両膝には滲出液は認められず、膝蓋腱の圧痛は軽微でした。
診察を受け、MRIで腱障害が確認され、3か月間の安静と歩行補助靴の使用が勧められました。しかし、この治療法では痛みは改善せず、数か月間理学療法を受けましたが、症状は改善しませんでした。6か月後、持続する症状の評価のため、リウマチ専門医に紹介されました。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の投与を試みたものの効果はなく、低用量経口ステロイドを試したところ、痛みが増強しました。
これまで点眼用フルオロキノロンによって誘発される腱障害の症例報告はなく、この合併症は添付文書の副作用には記載されていません。これはおそらく、点眼後の薬剤の最高血中濃度が低いためであると考えられます。この患者は以前にコルチコステロイドを使用していたため、腱障害のリスクが高まった可能性があります。
結膜炎などの目の炎症や感染で、タリビットなどのニューキノロン系の抗生物質の点眼薬を処方されたことがある人は多いでしょう。でも、十分な注意が必要です。
次は点耳です。(ここ参照)症例は58歳男性で、関連する既往歴はありません。以前に、この方は外耳炎の治療にコルチコステロイドを併用し、オフロキサシン200mgを5錠服用した後に、初めて腱障害を発症し、完治まで1年を要しました。それから12年後、患者は耳鼻咽喉科専門医を受診し、両耳の外耳炎に対し、オフロキサシン点耳薬(1回1.5mg、両耳に1日2回点耳)が処方されました。他の薬剤は服用していませんでした。
3回目の点耳から1時間後、患者は両足に痛みを感じ、その後アキレス腱、膝、肩、手首にも痛みが現れました。症状は以前に経験したものと類似していました。オフロキサシンは3回点耳した後に中止されました。その後数日、数週間にわたって症状は悪化しました。
痛みは日常生活に支障をきたすほどで、患者は整形外科用の靴底と松葉杖を使用する必要がありました。パラセタモールと短期間のNSAIDsが処方されました。1か月後にリウマチ専門医の診察を受けましたが、他に原因は見つかりませんでした。特に、腱障害に関連する可能性のある炎症性疾患は見つかりませんでした。アキレス腱の超音波検査では、炎症は見られず、ドップラー異常も見られませんでした。オフロキサシンの最終投与から7週間後、患者の体調は改善しましたが、依然として松葉杖を使用していました。 3か月たっても松葉杖なしでの歩行距離は4mでした。
点眼薬と同様にニューキノロンの点耳薬にも、腱障害の副作用については全く書かれていないでしょう。点眼も点耳も血中濃度はかなり低いと思われますが、投与経路に関わらず、すべてのニューキノロンについて注意喚起が必要だと思われます。
まさか、点眼や点耳でアキレス腱や膝が痛くなるとは誰も思わないでしょう。だから症例報告もほとんど出てこないのでしょうけど、調べたらかなりの症例が出てくる可能性はあります。
安易な薬は重大な結果を招く可能性があります。
「こんなになるまでなんで受診しなかったんですか!」
と患者を責める医師がいますが、
「安易な治療の副作用が
怖いからです」
と返したら怒られそうですね。