GLP-1受容体作動薬は流行っているようですね。セマグルチド(オゼンピック)のHbA1cと体重の減少効果は認められていますが、長期ではどうでしょうか?論文化されているものではありませんが、今年10月の第59回ヨーロッパ糖尿病学会での発表で、3年間の有効性が示されました。
対象は、セマグルチド皮下注による治療を開始した成人の糖尿病患者2万3,442人で、ベースラインの平均の年齢は62.2歳、女性が49.1%、体重94.1kg、BMI33.7、HbA1c7.6%でした。セマグルチドによる治療を開始する前に、29.8%の患者はインスリンで治療され、30.7%は他のGLP-1薬で治療されていました。
治療開始後6カ月以内の観察期間中の薬剤処方日数の割合(PDC)は、75%の患者で60%以上でした。(図は原文より)
上の図の(a)はHbA1cの推移です。観察期間中の薬剤処方日数の割合(PDC)によって分けています。PDCが60%未満よりも60%以上でHbA1cの低下は大きくなっています。特に80%以上では大きく低下をしています。しかし、不思議なことに効果のピークは6か月で、その後は徐々に戻りつつあります。一度HbA1cが低下すると安心して薬の使用を怠っていたのでしょうか?ちゃんと使い続けてたとしたら、段々効果が薄れていくのが現状なのかもしれません。3年後ではHbA1cは0.77%低下して6.82%、と書いてありますが、グラフを見るとこれはPDC80%以上の場合でしょうね。
(b)は体重の推移です。これはPDCにかかわらず、どれも減少し、3年間維持されています。体重は4.7kg低下して89.7kgでした。
セマグルチドによる治療開始以前に他のGLP-1薬による治療を受けていなかった群の方が、それらの低下幅が有意に大きくなっていました。なんか当たり前と言えば当たり前でしょう。すでにGLP-1薬の効果が出ているのですから。以前に他のGLP-1薬を使用していなかった群ではHbA1cは-0.87%、使用していた群では-0.54%、使用していなかった群の体重は-5.51kg、使用していた群は-3.01kgでした。
図の最後に書かれていますが、この研究は、セマグルチドのメーカーであるノボノルディスク社の資金提供を受けて行われています。つまり利益相反バリバリです。
さて、この結果をどう捉えますか?確かに効果が無いとは言えません。
しかし、以前の記事「効果を維持するためにはやめることができないGLP-1受容体作動薬」で書いたように、GLP-1薬で決して健康に向かっているわけではなく、改善しているわけではなく、ただHbA1cが下がった状態になっている、体重が減少した状態になっているだけで、この薬をやめればすぐにもとに戻ってしまいます。もちろん、一生この薬を使うつもりであればそれでも良いでしょう。でも、HbA1cや体重が減少すると言っても、この程度で頭打ちです。
また、「糖尿病薬?やせ薬?GLP-1受容体作動薬の副作用 その1」「その2」「その3」「その4」「その5」「その6」で書いたように、様々な副作用のリスクが伴います。
糖質制限であれば、もっと良い結果が早く得られます。ただし、糖質制限もやめればもとに戻ります。
薬を選ぶか食事を選ぶか?ご自身で考えましょう。
「Semaglutide therapy resulted in significant sustained reduction in blood glucose and weight over three years in patients with type 2 diabetes in a real world setting」
「リアルワールドでは、セマグルチド療法により、2 型糖尿病患者の血糖値と体重が 3 年間にわたって大幅に持続的に減少した」(原文はここ)
「不思議なことに効果のピークは6か月で、その後は徐々に戻りつつあります。一度HbA1cが低下すると安心して薬の使用を怠っていたのでしょうか?」
「HbA1cや体重が減少すると言っても、この程度で頭打ちです。」
精神的なものも含め、ちょっとやそっとでは揺るがない「恒常性維持機能」。
「現状打破」するためには川内優輝選手のようにしつこいくらい継続する
必要があるのだと思います。
それが薬の長期間服用なのか、食生活改善や運動などの生活習慣なのか。
人それぞれですが、
私は糖質制限とファスティング、ランニングなど運動を長期間継続し快調です。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
根本原因を改善する薬はほとんどありません。
食事の改善なくして、体の改善なしです。