スタチンなどのコレステロール低下薬と糖尿病性微小血管合併症との因果関係

メンデルのランダム化解析を使用した研究がいっぱい出されていますね。すべてを鵜吞みにはできませんが、やはり興味深い結果が出てくることもあります。

今回の研究では、薬物標的メンデルランダム化研究により、3種類の一般的なコレステロール低下薬と糖尿病の微小血管合併症との潜在的な因果関係を調査しています。3種類の薬とは、HMGCR阻害剤(スタチン)、PCSK9阻害剤、およびNPC1L1阻害剤(エゼチミブ(ゼチーア))です。

上の図のように、メンデルランダム化解析により、HMGCR阻害剤は糖尿病性腎症の可能性を1.88倍、糖尿病性網膜症の可能性を1.86倍、糖尿病性神経障害の可能性を2.63倍に増加させました。 PCSK9 阻害剤は、糖尿病性腎症1.30倍、糖尿病性神経障害1.40倍でした。NPC1L1 阻害剤は、糖尿病性網膜症の可能性を0.48倍に低下させました。

ちなみに、メンデルランダム化解析では3種類のどの薬も冠動脈疾患の可能性は低下させました。

スタチンとPCSK9阻害剤が糖尿病性微小血管合併症のリスクを大幅に高める可能性があることを示しています。さすがスタチンはマッチポンプ薬の代表ですね。

低LDLコレステロールと糖尿病」でも書いたように、高いLDLコレステロールではどんどん糖尿病発症の可能性が低下しています。「コレステロールの低下は2型糖尿病の末梢神経障害を悪化させる」で書いたように、コレステロールを下げると神経障害を悪化させます。

糖尿病とコレステロールの密接な関係」で書いたように、総コレステロール、LDLコレステロールどちらも低い方が2型糖尿病と関連が強くなります。しかもスタチンなどの薬を使っている方が2型糖尿病の割合が高くなります。

スタチンによる新規の糖尿病発症リスク」「スタチン誘発性糖尿病」「スタチンは糖尿病を誘発する可能性がある」「スタチンは糖尿病を進行させる」などで書いたように、スタチンは糖尿病の発症リスクを増加させたり、糖尿病を進行させたりします。

糖尿病は心血管疾患のリスクが高くなるので、予防的にスタチンを投与されている人もいるでしょう。でも、そうすると糖尿病の微小血管合併症を増加させてしまう可能性が高くなります。あとは自分自身の判断です。

「Causal Association Between Cholesterol-Lowering Drugs and Diabetic Microvascular Complications: A Drug-Target Mendelian Randomization Study」

「コレステロール低下薬と糖尿病性微小血管合併症との因果関係:薬物標的メンデルランダム化試験」(原文はここ

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